生まれるまでのこと。
明日で武優も1歳。生まれてからのことは明日にまわすとして、生まれるまでのことをちょっと書いておこうか。
初めて病院のエコーで武優を見た時は、マメみたいで不思議だった。だんだん、心臓が動いて、人間らしい形になっていって、手足をバタバタするようになって。本当に生まれてきてくれるのが楽しみだった。
「たけひろ」という名前は結構早くから候補にあがっていて、まだ名前が決まる前から「タケ」と呼んでいたんだよ。実は当時のTVドラマ「Dr.コトー診療所」に出てくる登場人物の1人に「たけひろ」という子供がいて、その子のように素直で、ひたむきで、芯の強い、そしてかわいい子になってほしいというのが最初のきっかけ。それから画数を考えながらたくさん漢字の候補を考えて、父さんが「武優」という字を見つけた時に、「これだ!」と思った。なかなか父さんと母さんの意見が合わなかったんだけど、この名前だけは二人が一瞬で気に入った。名前の通り、たくましく、それでいて人の気持ちの分かる優しい子になってくれたらいいな。
お腹の中にいる頃の武優は、電車が大好きで、母さんが会社や病院の行き帰りに電車に乗ると、決まってお腹の中で大きく動いて喜んでた。順調にすくすくと育ってくれたから、母さんは何の心配もなく、たくさん散歩したり、エアロビクスで踊ったり、こつこつと武優に着せる服を縫ったりできたんだよ。
予定日は4月25日。でも早く会いたくて、「もう生まれてきてもいいよ」って言ったその夜、眠れなくて起きあがった時に武優を守ってた水が出てきた。いよいよだ!とすぐに病院に電話して、ちょうど起きてきた父さんに車を飛ばしてもらって病院に行った。病院に行くとすぐに陣痛がはじまったんだけど、なかなか母さんの子宮口は開かず。でも武優は「早く出たい、早く出たい」ってぐいぐい中から押していて、苦しかった。
朝になると、おばあちゃんが来てくれた。「来てもらわなくても大丈夫」って言ってたんだけど、きっと心配だったんだと思う。夕方にはもう母さんすっかりクタクタで、武優が早く出すぎてしまわないようにお尻を押してくれるおばあちゃんに「違う!」と大声で怒鳴ったりしてたなぁ。病院で出たご飯の天ぷらも、見るのもしんどかったくらい。でも不思議とお腹はすかなかった。そしてなぜか陣痛で苦しい最中に、頼んでいたコープの宅配がきてることを思い出して、「しまった!コープに電話するの忘れたぁ!!」と叫んで、おばあちゃんと父さんはあきれるやら安心するやらで大笑いされたよ。
夜になると看護婦さんがなかなか来てくれなくて、やっときてくれた看護婦さんに「いつになったら産んでもいいんですか?」とくってかかってた。看護婦さんも困っただろうな。
とうとう、武優を産むお部屋に行った。父さんも一緒。母さんはエアロビで呼吸やいきみ方の練習をしてたから、練習通り台をつかんで、一生懸命力を入れたり抜いたり。父さんの方がオロオロして、母さんに握り締めたポカリスエットを差し出して「いらない!」とか言われて困ってた。20分ほどで武優誕生。頭が出てきて、最後は病院の先生や助産士さんに引っ張り出されたみたいだったよ。「ホギャー!ホェッ、ホェッ」というか弱いんだけれど生命力にあふれた泣き声を聞いた時は、人生で一番嬉しかった!!よく生まれてきてくれたね!!
武優を見た父さんと母さんの第一声は同時だった。「でかっ!」生まれたての赤ちゃんって鶏がらのような姿を想像してたんだけど、武優はもう骨もしっかりして肉付きもよくて、なんだか想像していたよりはるかに大きく見えたんだ。
続きは、明日。